どんな都市にもおぞましい事件やろくでもない為政者の記憶のひとつやふたつあるものだ。最近はダークツーリズムなる言葉が出てきたように、戦跡や虐殺の痕跡などを見て回ることが市民権を得るようになってきた。しかし、たいていの場合、忌まわしい記憶の痕跡は消され、やがて人々の記憶からも消えてしまう。
だが、それをエンターテイメントとしてショーアップし、あえて観光名所にしている場合もある。ロンドン・ダンジョンはその一例だ。
ヘンリー8世から切り裂きジャックまで
ロンドン・ダンジョンはテムズ川沿い、ロンドン・アイのすぐ側にある。
入り口からすでにおどろおどろしい。内部にはロンドン1000年の負の歴史をテーマにした舞台やライドアトラクション、参加型アトラクションなどが用意されている。イメージとしては巨大お化け屋敷が近い。
客は15〜20人くらいのグループ単位で中を進んでいく形式らしい。ツアーはおおよそ90分。ガイドつきで解説(もちろん英語)もしてくれる。
扱われているテーマとしてはヘンリー8世(エリザベス1世の父で6人の妻を持ったことで有名)、1666年のロンドン大火(ロンドン市内の85%が消失した)、スウィーニー・トッド(客を殺害していた理容師、都市伝説の一種)、切り裂きジャック事件などだ。中世のペスト流行や拷問をテーマにしたアトラクションもあり、絞首台をモチーフにしたライドアトラクションで締めなんだとか。
ちなみに『ダンジョン』はイギリス国内の他の都市にも存在する。内容はご当地向けにアレンジしてあるようで、例えばエジンバラ・ダンジョンではソニー・ビーン(18世紀のスコットランドで妻子とともに旅人を殺害、その肉を食べていたという伝説上の人物)が登場する。
オランダ・アムステルダムやドイツ・ベルリンなどにもあり、各地で好評を得ているようだ。
観光の際に立ち寄ってみたい施設の一つである。
参考
The London Dungeon 公式サイト(英語)。オンラインでチケットを買える。