カナダ東部、大西洋に面したノバスコシア州のオーク島には、財宝が眠っているという縦穴がある。この場所はマネーピットと呼ばれ、伝説の海賊キャプテン・キッドが財宝を隠したとか、あるいはマリー・アントワネットの金銀宝石が眠っているとか、テンプル騎士団の入手した聖杯があるとか、なぜかシェークスピアとの関連まで囁かれている。つまり、何でもありだ。
これまで多くの者が財宝の発掘を夢見てこのマネーピットを発掘してきた。現在でも調査は続いているようだが、この財宝にはもう一つ、忌まわしい噂がある。「財宝が見つかるまでに、7人が死ぬ」というのだ。
マネーピット、発掘の歴史
マネーピットが発見されたのは1795年ごろのことだという。ヨーロッパからの移民が入植したばかりの時期で、どうも以前からキャプテン・キッドの遺産がこの島に眠っているという噂が流れていたらしい。キャプテン・キッドの船の乗組員が今際の際に、オーク島に財宝を埋めたと言い残したというのだ。
現代まで伝えられるところによると、マネーピットの発見者は10代の少年ダニエル・マクギニス。ダニエルは釣りをしに出かけた時に怪しげな窪地を見つけ、この場所こそが財宝の隠し場所だと考えて仲間4人と発掘に勤しんだ。
窪地は周囲の地面と違い、緩んでいて掘り進めるのは明らかに容易だったという。地面を掘り進めると、60cm下に石を敷き詰めた層が見つかり、さらに3mおきに穴を塞ぐようなオークの木材の層があったという。だが、掘れども掘れども宝は見つからず、最終的に9.1mほど掘り進めたところで止めてしまった。
1802年ごろ、オンスローカンパニーによって発掘が再開された。やはり3mおきに木材の層があり、木炭や塗料、ココナッツの繊維も見つかったが、一番の発見は地下27m付近で見つかった石版だった。オリーブ色の石には暗号のような文字列が刻まれており、財宝への期待は高まっていった。ちなみにこの石の現物は、20世紀初頭に行方不明になってしまった。
だが、そこで発掘は思わぬ事態に直面した。どこからともなく水が侵入し、マネーピットは水で満たされてしまったのだ。どうやら穴には盗掘を防ぐための水路が仕掛けられていたようで、バケツでは排水も間に合わないほどの水量が侵入していた。仕方なく並行してもう一つ穴が掘られ、地下30mのあたりから元の穴に戻る横穴が掘られたが、こちらの穴も水没してしまい、調査は打ち切られた。
マネーピットは新聞や本などを通して広く知られるようになり、フランクリン・ルーズベルトなど数多の有名人、財界人、富豪がこの財宝に興味を示し、その投資で発掘が続けられた。マネーピットからは記号の刻まれた石、文字の書かれた羊皮紙の切れ端や金属、陶器の破片などが発見されたが、肝心の財宝は未だ発見されていない。
発掘は現在も続けられており、アメリカ人のリック・ラジーナとマーティ・ラジーナの兄弟の活動は、アメリカのヒストリーチャンネルの『The Curse of Oak Island(邦題:呪われた島 オーク・アイランドと財宝の謎)』という番組になっている。2020年にはシーズン7が配信されており、非常に人気のある番組のようだ。huluのほか、Amazon Primeでもシーズン3まで見られる。
冒頭に述べたとおり、マネーピットには「7人死ぬ」という呪いの噂がつきまとっている。発掘中の事故でこれまでに6人亡くなっているというから、残るはあと一人ということになるが……。
参考
Oak Island Mystery
What Is the Oak Island Money Pit? (History) 英語
呪われた島 オーク・アイランドと財宝の謎(Amazon Prime)