酒飲みがおかしなことを考えるのは世界共通だが、なぜそんなことを……と呆れるしかないカクテルがカナダにある。ユーコン準州ドーソンシティのダウンタウンホテルの名物「サワートゥー・カクテル(Sourtoe Cocktail)」は、人間の足の指が入った、多分世界でここでしか飲めない酒である。
1オンスのアルコールに勇気を添えて
サワートゥー・カクテルが初めて登場したのは1973年のことで、地元に住むディック・スティーヴンソンという人物が、小屋の掃除中に50年前の古い酒瓶を発見したことがきっかけだった。酒瓶の中に、ミイラ化した人間の足の指が入っていたのだ。
このとき発見された指の主は、ルーイ・ライケンという鉱山労働者と言われている。1920年代に凍傷で足の指を失い、それをラム酒の瓶に漬け込んで保存していたらしい。発見者のディックはこの不気味な発見を面白がり、勇敢さを試すためと称して、グラスにその指を入れ始めたのだ。
サワートゥー・カクテルのレシピはシンプルだ。お酒の種類はビールでもウイスキーでもシャンパンでもなんでもいい。1オンス(30ml)のアルコールにミイラ化した指先を入れ、勇気を添える。それだけだ。飲むときには指の先を唇につけることがルールで、飲み終えると証明書をもらえる。
現在は10本目
最初の指は1980年7月、ある労働者の胃に消えて二度と帰ってこなかった。サワートゥー・カクテルを飲んでいる最中に椅子が後ろに倒れ、うっかり飲み込んでしまったのだという。ただ、その後も新しい指が寄付され続けたたため、サワートゥー・カクテルの提供は現在まで続いている。2013年にはアメリカ人観光客がわざと指を飲み込むという前代未聞の事件も起きているほか、盗まれてしまったこともある。
現在使われているのは10本目の指で、凍傷を起こしたイギリス海兵隊員のものだという。ダウンタウンホテルのマネージャーによると、サワートゥー・カクテルに使う指は、塩漬けにしてアルコールで保存しているそうだ。地元当局からもお墨付きをもらっており、衛生的でもちろん合法とアピールしている。盗まれたり飲み込まれたりしなくても、サワートゥー・カクテルに使われる指は一定期間使用したのち「引退」することになっているといい、新しい指が用意されているとのことだ。
なぜそんなことを……と思わずにはいられないサワートゥー・カクテルであるが、勇気を試したい人は、ダウンタウンホテルのサワードゥ・サルーンに行くといい。8カナダドルの追加料金で勇敢さを示せるなら安い物だろう。多分。
参考
A cocktail with a mummified human toe in it?! It exists at this Canadian saloon (USA Today) 英語
The Sourtoe Cocktail (Atlas Obscura) 英語
Downtown Hotel ダウンタウンホテルの公式サイト。英語
Downtown Hotel (Wikpedia) 英語。画像はここから引用。