BL愛好者に流行る「オメガバース」とは何か 今も生まれ続ける「オカルト」

正月早々、久しぶりに会った腐女子の友人に「オメガバース」なるものを教えてもらった。私は全く知らない単語だったのだが、Google検索すると約378,000件(2018年1月現在)もヒットする。2010年代前半くらいからBL愛好者の間で広まったようで、その筋では非常にメジャーな単語なのだ。

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オメガバースとは何か?

オメガバースとは二次創作(原典となる創作物を利用して二次的に作られた作品群)におけるジャンルの一つで、主にBL分野で愛好されているという。発祥は海外で「Omegaverse」と表記する。

オメガバース作品では性別が男女+三つの階級という世界観を共有している。最大の特徴は生まれつきの身体的特徴に基づく、厳しい階級性が存在することだ。人間はアルファ、ベータ、オメガという三種類に分類される。

・アルファ:エリート階級。性格的にも肉体的にも集団のボス気質。攻め(入れる方)。
・ベータ:一般人で数は一番多い。ごく普通の人間。モブ。
・オメガ:男女どちらの間にも子供を作れる。発情期があるため蔑まれがち。受け(入れられる方)。

生物学的には、メスとは卵(卵子)を持つ性を指す。だから厳密に言うとアルファ女とオメガ男は両性具有となり、純粋な「女性」はベータ女だけである。BLというジャンル上、ストーリーで重要なのはアルファ男の攻めとオメガ男の受けだけだ。果たしてこの世界観に男女の区別は必要なのだろうか?

つっこみはさておき、オメガバースは野生のオオカミの群れを参考にしたものと言われている。オオカミはつがいを中心とした階級社会で、高い順にアルファ、ベータ、オメガという。オメガ階級の個体は上位階級のストレスのはけ口になりやすいことが、オメガバースの参考になったと思われる。

それにしても、なんでこんな奇怪な設定が流行ったのか? 一つにはカップリングの左右(要するに攻めと受け)を固定できることがあるという。BL愛好者にとって最重要はカップリングであり、どちらが攻めでどちらが受けかはその次に重要なものらしい。なので、アルファが攻めでオメガが受けという大前提があるため、安心感があるのだとか。また、男性同士でも妊娠出産が可能という点も高く評価されているようだ。

さらにアルファとオメガの間にしか生まれない「つがい」という独自の関係性も萌えポイントなんだとか。一度つがいになったカップルは生涯その関係を維持し、無理に引き離された場合、オメガは死ぬほどの精神的苦痛を味わうという。オオカミは基本、アルファの雌雄ペアしか繁殖活動しないんだけど……というのは野暮なつっこみだろう。

「いらすとや」より

オタクは宗教に似ている

オカルトという言葉を定義することは難しい。ラテン語の「隠されたもの」を語源とし、かつては正統派の学者が論敵にレッテルを貼るために使われた言葉であった。しかしながら、現代において「オカルト」の言葉は拡大され、特定の世界・地域・時代、あるいは趣味者しか知らないような特異的なことというのは、だいたいオカルトの範疇に入るような気がする(個人の感想です)。そして、私はそういう雑多な意味を含むオカルトが大好きだ。

オタクカルチャーは宗教に似ているとかねてより指摘されている。そして実際に、信者やらお布施という単語が転用され、ソシャゲのガチャを当てるために様々なまじないが日々行われている。思想や趣味を同一とした濃いコミュニティ内で、オメガバースのような新たな思想・ムーブメントが生まれるのは当然のことだ。

そして、オタクたちも宗教と同じく、ささいな思想信条の違いで日々戦争を繰り広げているようだ。友人によると、最近ではアルファが受けになった作品、男女カップリングでのオメガバース作品も増えているのだとか。それを語る彼女の顔はなんとも忌々しげだった。

一方の私はといえば、現在も「オカルト」は生まれ続けているのだなあと、しみじみと感じ入っていたのである。

参考
オメガバース(Pixiv百科事典)

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