ドワーフが作った?「小鬼の穴」 エルドシュテーレ

ドイツ、オーストリア、チェコの国境が交わる地域には、エルドシュテーレと呼ばれている奇妙な地下トンネルが多数存在する。入り口は修道院の地下墓地や農家などにあり、明らかに人の手によって作られているが、その意図や用途は判然としない。

Erdstallmap

エルドシュテーレの入り口がある場所(Spiegelの記事より)

エルドシュテーレは10〜13世紀頃に作られたと言われており、科学的な分析もそれを裏付けている。だが、不思議なことにこのトンネルに関する文書などの記録は残っていないという。
内部は狭く、多くの場所では成人一人が立つことも出来ない。妊婦や肥満の人は通れないし、病人や老人は移動するのも難しいような場所だ。食料や排泄物などの人間や家畜が暮らしていた形跡もほとんどない。
シュラッツェロッホ(小鬼の穴)と呼ばれ、かつてはドワーフが掘ったとも言われていた。

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隠れ家か、カルトの祈りの場か?

オーストリアのエルドシュテーレの入り口(wikipediaより)

オーストリアのエルドシュテーレの入り口

エルドシュテーレの正体については諸説あり、今でもよく分かっていない。
有力な説の一つは襲われた時に財産や家畜を隠し、自らも身を隠すための隠れ家だったというものだ。だが前述の通り、ほとんどのトンネル内は非常に狭く、守備には向かないという。
流浪人や修道僧の冬ごもりの場や病院だったという説もあるが、それならば当然残っているだろう生活の痕跡は乏しい。
また、非キリスト教カルトの祈りの場だったという説もあり、記録が残っていないのはそのためではないかという見方も存在する。

近年、研究のためのワーキンググループが組織され、調査が進んでいるという。
なお、エルドシュテーレのいくつかは公開されているらしい。ただし、保存や安全のために内部を見られる場所は少ないようだ。

参考
Erdstall (wikipedia) 英語版Wikipediaの記事。
ワーキンググループの公式サイト(ドイツ語) 内部の写真などが見られる。
Spiegel onlineの記事(ドイツ語)

絶対に行けない世界の非公開区域99 ダニエル・スミス 日経ナショナルジオグラフィック社

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