検索してはいけない『ウクライナ21』 ドニプロペトロウシクの狂人達

もう随分前だが、ネット上で「検索してはいけない言葉」というのが流行っていたことがある。様々な言葉が挙げられていたが、その中で最も有名なのがおそらく『ウクライナ21』だろう。

なぜ検索してはいけないか? それは、殺人の様子を収めた動画が簡単に出てくるからだ。それも戦争やテロでの残虐行為を映したものではなく、連続殺人犯が自分の犯行を撮影していたものが。

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ドニプロペトロウシクの狂人達

2007年の夏、事件はウクライナのドニプロペトロウシクで起きた。犯人はヴィクトル・サエンコ(Viktor Sayenko)、イゴール・シュプルンヤク(Igor Suprunyuk)、アレクサンドル・ハンザ(Alexander Hanzha)の3名。いずれも当時また19歳の少年だった。

3人は同じ学校の出身で、しばしば動物を虐待して殺害していた。また、シュプルンヤクとサエンコには強盗の前科もあったが、未成年だったために刑務所には入っていない。

サエンコ(左)とシュプルンヤク(右)。奥でモザイクがかかっているのは動物の死体。

主犯はサエンコとシュプルンヤクの2人で、たった二ヶ月の間に21人を惨殺した。また、連続殺人事件の前には武装強盗も行っていたほか、動物虐待の罪にも問われている。ハンザは血液恐怖症だったことから連続殺人には関わっていないとされ、殺人罪にこそ問われていないが、強盗事件や被害者の金品強奪などに関わった。また、ハンザの車が多くの事件で使われたと考えられている。

彼らはそのおぞましい犯行から、ドニプロペトロウシクの狂人達(Dnepropetrovsk maniacs)と呼ばれている。

事件の概要

最初の事件が起きたのは2007年6月25日のことだ。当時33歳の女性が友人の家に行った帰りに襲われ、頭部をハンマーで滅多打ちされて殺害された。その直後、サエンコとシュプルンヤクは第一事件の現場近くの公園で寝ていた男性をやはりハンマーで撲殺している。

7月1日には二人、7月6日には三人が殺された。7月7日には14歳の少年が襲われて殺されたが、被害者と一緒にいた少年が逃亡に成功し、彼の証言が後の犯人逮捕に繋がっている。

7月12日、48歳の男性が暴行の末に殺害された。この時に撮影されたのがいわゆる『ウクライナ21』のビデオであり、犯人らが逮捕された後にインターネットに流出した。被害者の遺体は4日後に発見された。

7月14日、当時45歳の女性がスクーターに乗っていたところを襲われ、撲殺された。この事件には目撃者がおり、犯人を追跡したが逃げられてしまった。

事件は連日のように起こり、最終的に21人が殺害された。7月14〜16日には毎日2人の犠牲者が見つかったという。

犠牲者はランダムに選ばれたようで、多くは子供や高齢者、ホームレスだった。被害者の多くは顔を殴られており、判別できないほどに滅多打ちにされていた。凄惨な暴行も加えられており、妊娠していた女性は胎児を胎内から取り出されていた。なお、被害者には女性もいるが、性的暴行は認められていない。一部の犠牲者は携帯電話や貴重品を奪われているが、ほとんどの場合で手付かずだった。

被害者の携帯電話の転売がきっかけとなり、3人が逮捕されたのは2007年7月23日のことだった。彼らの携帯電話やパソコンからは殺人事件の動画が複数保存されていた。また、被害者の葬儀で撮影した画像も複数見つかっている。さらに、動物虐待の様子も撮影されていた。

シュプルンヤクは当初は犯行を自供していたものの、後に撤回して無罪を主張した。一方で残る2人はすべての罪を認めている。また、弁護士であるサエンコの父親も息子の弁護を行って有名となった。

2009年に最高裁判所で、サエンコとシュプルンヤクには終身刑が、ハンザには懲役9年が言い渡された。ウクライナには死刑制度はない。

未だに残る謎

2008年、公判中に検察から犯行ビデオの存在が公表され、現地では大きなショックが広がった。だが、このビデオが2008年12月にネット上にリークされると、今度は世界中で大騒ぎとなった(英語圏では『3 guys 1 hammer』として知られている)。警察か検察から流出したとみられるが、詳細は不明だ。

実は本事件の動機は、未だによくわかっていない。一部メディアは事件の動機をスナッフフィルムの撮影による金儲けだったとも報道している。犯罪者が自分の犯行を撮影することは決して珍しいことではないが、流通目的で撮影されたのなら、件の動画は史上初のスナッフフィルムということになる。

正直なところ、現在ではウクライナ21を超えるさらにショッキングな動画がいくらでも存在する。だが、その存在を一般人にまで広く知らしめたという意味で、この事件は非常にショッキングかつ21世紀的な事件であったといえるだろう。

参考
Dnepropetrovsk maniacs (Wikipedia) 英語。画像はここから転載。

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