現代版驚異の部屋で死について考える 病理解剖学博物館

19世紀後半、西洋で衛生博覧会なるイベントが流行った。

その名の通り、公衆衛生や病気について学ぶことを目的に開催されていたが、人体の理解、病気の予防というお題目のもと、性病にかかった性器やら内臓をむき出しにした妊娠中の女性の模型などのリアルでグロテスクな展示物がずらりと並んでいたという。当然、大変な人気を博していた。この流行は当然日本にも波及し、明治時代から昭和の半ばくらいまで全国各地で開催されていたという。

荒俣宏の裏・世界遺産(3) 衛生博覧会を求めて 角川文庫
衛生博覧会については荒俣宏がまとめたこの本が面白かった。

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現代版・驚異の部屋

米国ニューヨークのブルックリン地区にあった病理解剖学博物館は、「死」を考えさせることをテーマに、様々な学術資料、古い剥製、工芸品などを集めた博物館である。当然、衛生博覧会で展示されていたような蝋人形や模型もそのコレクションの一部だ。

この博物館の目玉は「驚異の部屋」風の展示室だろう。「驚異の部屋」はかつてヨーロッパの貴族や金持ちの間で流行した、世界各地の珍品を陳列した部屋のことだ。今日の博物館の前身ともいわれており、例えばハンテリアン博物館もジョン・ハンターの家で公開されていた個人コレクションがルーツだ。

驚異の部屋の一例。Wikipediaより。

シックなシャンデリアや家具が置かれた部屋には、奇形動物の標本や人間の頭蓋骨をはじめ、19世紀に撮影された遺体の写真などがずらりと並んでいる。本棚には怪しげな書籍がずらりと並び、部屋の片隅には不気味な祭壇も置かれている。

非常に興味深い博物館であるが、残念ながら2016年末に閉館してしまった。原因は資金難。ブルックリンという場所に博物館を維持するのはやはり大変だったようだ。
なお、展示物は館長や協力者たちの個人コレクションであったそうだ。館長の公式ブログではその一部を見ることができる。

参考
Morbid Anatomy 公式ブログ。英語。
「死」を考える博物館が閉館、米ニューヨーク(ナショナルジオグラフィック)

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