メインディッシュは「冷凍マンモスの肉」 1951年のディナーに出された肉の正体

嘘か本当かは判然としないが、シベリアの永久凍土から露出した冷凍マンモスの肉を、地元民が食べたり犬に食わせたりしたという話はいくつも残っている。

冷凍マンモス・リューバ(Wikipediaより)

いくら氷漬けになっていたとはいえ、数万年〜数千年前に死んだ生物の肉が食べられるのか?ある古生物学者によると、冷凍マンモスは見た目こそすばらしいが、その肉からは強い腐敗臭が漂い、とても食べられたものではないという。肉を冷凍庫に入れたまま長期間忘れた経験がある人なら、冷凍状態にしておいても劣化することが身にしみているのではないだろうか。

だが、1951年にアメリカで行われたパーティーで、「米アラスカの冷凍マンモスの肉」がディナーに供されたことがあるというのだ。参加者は本当にマンモスの肉を食べたのだろうか?

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メインディッシュはマンモス?

1951年1月13日、ニューヨークでエクスプローラーズ・クラブの会合が行われた。このディナーでは毎回希少で風変わりな料理を提供するというお約束があり、この時のメインディッシュは地質学者が持ち込んだという、アラスカ・アリューシャン列島で発見された「先史時代の古生物の肉」であった。マンモスの肉だというそれは、参加者一人あたりにするとほんの一切れずつでしかなかったが、物珍しいメインディッシュに人々は歓喜し、後々まで周囲に自慢したという。

この噂が広まると、ディナーに供された肉の正体が取りざたされるようになった。それは本当にマンモスだったのか、それともマストドンだったのか、あるいはメガテリウムだったのか?いずれもすでに絶滅した古代の巨大生物である。

謎の肉の正体

この謎は解決不可能と思われたが、その手がかりは米イェール・ピーボディ自然史博物館に残されていた。ディナーに供された肉の一片がこの博物館に保存されていたのである。

博物館に保存されていた肉片(PLOS ONEより)

2016年、このサンプルのDNAが分析された。ただでさえ古い肉、そして調理されていることからDNAの抽出はやや難しかったという。そして、解析結果が示した肉の正体は、古代に絶滅したマンモスでもマストドンでもメガテリウムでもなく、現存する絶滅危惧種アオウミガメであった。

古生物の肉として出されたのはウミガメの肉だったわけだが、実のところ、この「ネタばらし」はディナーの直後すでに行われていたという。このディナー企画者の一人だったウェンデル・フィリップス・ダッジが、著作の中でウミガメの肉を使ったジョークだと白状していたそうなのだ。だが、その告白は注目されることなく、「冷凍マンモスの肉がディナーに出された」という話だけが一人歩きしたのである。

そもそも、ピーボディ博物館に肉片のサンプルを提供したのはダッジ本人であったそうだ。当時はまだDNAも発見されていなかったが、このサンプルがなければ、彼のささやかなジョークはジョークと証明されないないまま、長く伝説として語り継がれたことだろう。

参考
NY Times
The Atlantic
PLOS ONE

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