エビータはロボトミー手術を受けていた? アルゼンチンの聖女エバ・ペロン死の直前の謎

ロボトミーとは精神病などの改善を目的にした脳の外科手術で、前頭葉の白質の一部を切開し、神経線維を切断するというものだ。この手術を受けた多くの患者では緊張や興奮などの症状が軽減したが、一方で無気力や感情反応の低下がみられ、人格が変わったり知能が下がったりと悪影響も大きかった。薬物療法などが登場すると、ロボトミーは危険で回復しない後遺症を患者に残すと強く批判されるようになって各地で禁止されるようになる。

一般にロボトミーは精神病やPTSDなどの治療に用いられていたが、1950年頃にはそれ以外の目的のためにも有効だと考えられていた。その一つがガンなどの疼痛治療だった。慢性的な激痛を取り除くための手段として、薬物中毒の危険性があるモルヒネの投与に比べ、ロボトミーは「人道的」であるとさえ考えられていたというのだ。

そして、疼痛治療のためにロボトミーを受けたとされる要人がいる。時のアルゼンチン大統領フアン・ペロンの妻で、国民から絶大なる支持を受けていた『エビータ』ことエバ・ペロン(1919年5月7日 – 1952年7月26日)である。

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エビータがロボトミーを受けた?

エビータは1952年、33歳の若さで病死している。死因は子宮癌だった。貧困家庭の私生児からファーストレディにのし上がったエビータは、当時のアルゼンチン国民から夫以上の人気を集めていたといい、そのドラマチックな人生は映画やミュージカルにもなっている。

エバ・ペロン

病気が発覚した1951年、エビータの夫フアン・ペロンは大統領選を控えていた。彼はカリスマ的な人気を博す妻を前面に押し出して再選後は副大統領にしようとさえしていたが、病気の発覚によって断念している。エビータは高名なアメリカ人手術による手術や放射線治療、化学療法などを受けたが、残念ながらガンの進行は止まらず、やがて激しい痛みや苦痛にさいなまれるようになる。

病床のエビータは、慢性的な激痛と死の不安からなのか、以前にも増して好戦的になり、夫と自分の政敵を抹殺しようと動いていたらしい。BBCの記事によると、フアンの知らないところで支持者の労働者たちに機関銃などの武器を供給して民兵に仕立て上げようとしていたという。

一歩間違えれば内戦状態に陥りかねない危険な行為だった。激しい苦痛を訴え、手に負えないほど衝動的、攻撃的になっていく妻。危機感を覚えた夫は、彼女にロボトミー手術を受けさせることを決意する。

エビータとフアン

大統領宮殿に秘密の手術室が設えられ、1952年の5月か6月、ハンガリー出身の医師George Udvarhelyiによるロボトミー手術が密かに行われた。後にこの医師らが明らかにしたところによると、エビータは手術に同意していなかったという。

手術後、エビータはフアンの大統領就任式に参加している。体重は36kgにまで落ちて、支えがなければ立っていることもできないような状態だった。その数週間後、エビータは死去した。彼女が死の直前にロボトミーを受けたことは、当然のことながら長く秘密にされた。

遺体に残った痕跡

エビータの死後、その遺体はエンバーミングを施されて保存された。夫の失脚に伴いイタリアに運ばれるなど数奇な運命をたどった後、現在はアルゼンチンの墓地に埋葬されているらしい。

エビータの遺体

2011年、エビータの遺体が科学的に調査された。すると、遺体の頭部にロボトミーの痕跡が見つかったのである。それより少し前、エビータにロボトミー手術を行ったGeorge Udvarhelyi医師は、この秘密を告白していた。それを裏付けるような調査結果であった。

参考
BBC 英語
NY Times 英語
World Neurosurgery 2012年に発表された、エビータがロボトミーを受けていたという説を検証した論文。英語。
Wikipedia 画像はここから引用。

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