よくわからない! 量子暗号通信のしくみ

最近、中国が量子暗号通信の実験衛星の発射に成功したとか、量子テレポーテーション転写に成功したとか、量子暗号に関するニュースをよく見る。
以前仕事でもこの分野をちょっと調べたことがあるので、ここで少しまとめておきたいと思う。

量子暗号通信とは

現在ネットでも広く使われている公開鍵方式は、量子コンピュータなど計算技術の発達により無力化するといわれている。平文と同じ長さの鍵を使い捨てる方式なら安全性は保たれるが、実用的ではない。
そこで次世代の機密通信システムとして研究されているのが量子暗号通信だ。量子暗号技術では現行の公開鍵暗号方式とは違い、暗号化も復号も鍵一つで行う。情報の受信側と送信側は量子通信で鍵を共有する。

量子には「位置と運動量を同時に確定できない」「観測によって状態が変わる」という二つの特徴がある。衛星から送信された量子(光子として発射される)が第三者によって盗聴(観測)されて再送信された場合、この観測の影響で光子自体の性質が変わってしまう。送信者と受信者の間でデータの一部だけを抜き出して照合し、食い違いがあった場合、それは盗聴があった証となる。

量子通信の仕組み

この業界の例によって、送信者アリスと受信者ボブの間で量子通信を行うと考える。アリスとボブの間では、量子の状態のうち(偏光やスピンの向きや位相など)どれを使って0と1を表すかは決めてある。ここでは偏光とスピンの向きの二つを計測することにする。あらかじめ、縦偏光が0で横偏光が1、右回りスピンが0で左回りが1というように決めてある。
アリスは偏光かスピンかどちらかに情報を設定し、一つの量子をボブに送る。ボブは偏光かスピンの向きのどちらかを調べ、アリスに報告する(これは通常の通信で良い)。合っていれば次へ、間違っていたらその結果を破棄して、アリスはもう一度量子をボブに送る。これを繰り返せば、アリスは十分な長さの鍵をボブに送ることができる。

さて、ここに盗聴者イヴがいる。イヴはアリスが送信した情報を覗き見るが、これにより量子は性質が変わってしまう。アリスがスピンの向き(右回り)に情報を込めて量子を発射したとする。イヴもスピンの向きか偏光のどちらかを選ばなければならない。ここで偏光を選んだ場合、イヴがアリスに成り代わってボブに送信する量子は、二分の一の確率でスピンの向きが左回りになってしまう。
送信が終わった後、アリスとボブはお互いランダムに抜き出した情報(チェックビット)を比較する。イヴの盗聴により、二人のデータには一定確率で誤差が生じる。食い違いがあった場合、それは盗聴されていた証拠なので、結果を破棄し、改めて通信をやり直すこととなる。

量子暗号通信といっても、目新しいのは鍵をやりとりする通信の方式だ。暗号化の方法は古典的なやり方とそう変わらない。また、量子通信は通信速度や距離の点で光ファイバにかなり劣る。

量子通信は、いずれは通信技術のメインストリームに躍り出るといわれるが、そのために超えなければならない壁は多いようだ。

参考
第71回 秘密の鍵は光に乗せて −量子暗号の仕組み− テクの雑学

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